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だれかさんと結婚した最原ちゃんと、

再会してしまった王馬くんが不倫する話。

​ぬるいR18描写あり。

倫理的に許せない方は、お気をつけください。

Lamb. 01

彼は青空を背にして優雅に笑った。





遠くで飛行機の飛び立つ音がする。真っ青な空で、轟音を立てながら存在を主張する鉄の塊。白い雲を突き抜けて、遠い異国へと旅立っていった。
飛行場まで、そう遠くはない。逢瀬の場所に、彼が彼女を見送ってきた帰り道を選んだからだ。彼はそのことを特段疑問に思わない。むしろ、気を遣って近くにしてくれたのだろう、くらいのことを考えているに違いない。
じっと視線を外さないでいると、彼の笑顔がはにかんだ。

「どうしたの?」

当初と比べれば、ずいぶん甘くなった声が問う。見てただけだよ、こちらも微笑みながら答えると、彼はさらに笑って首を傾げた。
笑顔も、昔と比べてよく見せるようになった。以前は意識して笑わせないと無表情なことが多かったが、最近は何でもないときでも薄く微笑みをたたえていることの方が多い。精神が安定しているのかもしれない。
なんとなく、隣に立って空を見上げる。先ほどの飛行機は、もう見えなくなっていた。違う便が離陸準備をしている。

「今回は何ヶ月だっけ?」
「えーと……3ヶ月、かな?」

本当は覚えていたが問いかけると、彼があいまいに答えた。正解だが、同時に「おいおい」と苦笑いする。

「あやふやだね。ちゃんと帰国日わかってる?だいじょうぶ?」
「……帰って、手帳を見れば書いてあるから、だいじょうぶ」

しばし左上を見つめた後、彼はそう答えた。期限に追われるようなことではないので、たしかに大丈夫なのだが、それにしても変わったものだと思う。前は、カレンダーの帰国日に赤丸をつけて、指折り数えていたというのに。
さてそれはどうして変わってしまったのか、と、他人事のように考える。

「そういえば、どっか行きたいとこがあるんだっけ?」
「あ、そうそう。今度、キミと行こうと考えてたんだ」

自身の居ないときでも彼の頭の中に存在したとわかって、自分でも驚くほど上機嫌になる。スマートフォンを取り出して、目当ての場所を示してくる彼に気づかれないよう、にやつく口元を諫めた。
頬がくっつくほどに近づいた彼の腰にそっと手を置き、目線だけを空へ見やる。

(この先3ヶ月間は、またオレのものだ。今回は何をしようかな?)

一生懸命に行きたい場所の説明をしている彼に相槌を打ちながら、あっという間に過ぎ去ってしまうであろう夢の期間に思いをはせた。





新しいことももちろん行っているが、定番のコース、というものもある。
定番という言葉が使えるほどに逢瀬を重ねていたのだと、そう思うと感慨深いものがある。

彼が彼女を見送る。飛行場近くの場所で落ち合う。軽く買い物をして、車で彼の家に移動する。
自分がプレゼントしたホームシアターセットで、映画を1本観る。お菓子や軽食、ジュース、たまにお酒を入れながら、映画の感想を言い合う。腹も膨れたところで、風呂に入り、寝室へ移動する。

「……少し日焼けした?」

真っ白な肌に、赤みが掛かっている。ああ、と荒い息の間で、彼が答えた。

「午前中からずっと、外に出てたから。焼けたのかもしれない」
「今日、日差し強かったもんね。だめだよー、肌、あんまり強くないんだから、日焼け止め塗らないと」

彼女にもよく叱られているでしょう?
名前を出すと、彼が顔をしかめた。話題に出すなという意思表示だろう。意に介さず、はいはい、と適当に流す。
何か言おうと開かれた口を、自身の唇でふさぐ。腕をつかまれて抗議されたが、舌をからめとり、歯列を舐めあげていると、その抵抗は徐々に失われていった。まったく相変わらず快楽に弱い。
とろりとした瞳になったことを確認し、シャツの下へと手を差し入れる。ぴくりと彼の身体が反応する。
脇腹のあたりを優しく撫でつつ、指を上に動かしていく。おそらく一番触ってほしいであろう突起には触れず、焦らすように手のひらを背中へと移動させた。

「っ、……ず、ずるい、……」
「ずるい?何が?」

意地悪く笑うと、うるんだ目が睨みつけてくる。その視線が気持ちよくて、ぞくぞくする。
わかってるくせに、ぼそりとつぶやいた彼は、肩口に顔をうずめてしまう。もうだいぶ回数を重ねているのに、彼はいつまで経っても慣れた様子を見せない。期間を空けているせいもあるだろうが、カマトトを疑いたくなるほどだ。
このまま焦らすか先に進むか、常にフル回転をしている頭が一瞬だけ考える。
久しぶりの彼を焦らし続けて、泣かせるのも捨てがたい。ここはさくっと先に進んで、違うところに時間をかけるのも良い。
うなじをさすると、彼がびくりと肩を震わせた。顔が少し上がり、涙目が見える。
その目が気に入ったので、先に進むことに決めた。

「ん、あっ」

うなじにあてたのとは逆の手で、胸の突起に触れる。声を我慢しようとしていたようだが、耐えきれず唇から嬌声が漏れ出る。

「……っふ、きゅ、急に……」
「オレはリクエストに応えただけだけど?」

にやにやと笑いながら言えば、悔しそうに唇が噛み締められる。どうせ勝てないのだから反論しなければいいのに、と思うが、毎回懲りもせず抗う彼がいとおしい。
いとおしさを押し込めるように、再びキスをする。舌を入れ、甘噛み、軽く吸う。そのたびに彼の身体が跳ねるので、うなじを押さえて逃がさないよう固定する。
気が済むまで口内を蹂躙しようと考えたが、気の済む気配がないので仕方なく唇を離す。彼の舌から唾液がこぼれ、しずくが顎を伝って落ちていく。シーツに丸く染みを作る様子を、目の端で捉えていた。

「さて、今日はどんなのがお好みかな?」

結局は何でも悦んでしまうのだが。
会わなかった間に考えていたアレコレを、どれから試してみようかと笑えば、彼の瞳が期待の色に滲んだ。

 

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